住宅メーカーのマル秘テクニック
暮らし方や生活を固定的にしか見られない人では困ると思っていました。
その点Kさんは、私が希望を出すと、一つの解答だけではなく、さまざまな角度からたくさんの解答を引き出すことができる人でした。
それがわかった時点で、Kさんに依頼すると決めました」「施主は想像力と責任を持たねばなりません」話し合いながら、Kさんはプランを出した。
「Oさんのいうように、一般的だと思われている家族が、現実にはそれほど一般的ではない、というのは私も感じていました。
私が過去十年間に設計した住宅にも、夫婦に子ども二人という“一般的家族”は一軒しかありません。
一人暮らしの家もOさんを含めて二軒やっています。
家族は変化しますし、変化の方向も一定ではなくなってきましたね。
だから家は多様な変化に対応できる形にしなくてはと思っています。
たとえば間仕切りの方法によって、生活の変化、家族の変化に柔軟に対応できる設計ですね。
Oさんの家も、今後生活が変わるのに従ってさまざまな使い方が実現できるようにと、各部屋の間仕切りや空間構成の変更が可能なように工夫してプランを練りました」。
プランが決まって着工してからも、頻繁に工事現場に通いながらKさんはOさんと話し合い、仕上げや素材のことなど、図面にあらわしきれなかった詳細部分を決めていった。
「建築家は施主の要望を聞くだけでなく、言葉にならないところもふくめてどんな暮らしを望んでいるのかを見ていかねばなりません。
またプランを一方的に出すだけでなく、施主との間でそれを検証していく作業が必要ですね。
収納一つとっても『広くしておいてね』といわれて、広さの概念が施主と食い違っていては双方で困惑するだけ。
提案を出し、それを理解してもらっているかを確かめるコミュニケーションがぜったいに必要ですね」。
最初に、OさんはKさんに“新しいけれど古い家”という哲学的命題を出した。
家にとっての新しさ、古さとは何かと突きつめて考えていくとたいへんな命題である。
OさんはKさんと話し合っていくうちに、できあがったときにはぴかぴかしてきれいでも、しだいに古ぼけていくのではなく、年月をへるにしたがって味を増していく家、というのを自分は望んでいるのではないかと思った。
「素材を選ぶときに工夫しました。
たとえば壁にはプラスター中塗り止めという、漆喰などの仕上げの下地に使う材料を使いました。
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